さようなら

さようなら
Long goodbye
2021年/日本語/日本/101分
解説
淡路島の小さな工場で働く味気ない人々の物語。彼等、彼女等が生み出す甘美な絵空事が全てを巻き込み錯綜する。CoRich舞台芸術まつり!2018春グランプリほか数々の受賞歴に輝く名実共にオパンポン創造社の代表作である舞台劇「さようなら」の映画化。
あらすじ
淡路島の小さな工場で働く宮崎、柴田、末田、チェンは閉塞感のある日々を暮らしていた。そんなある日、末田は工場の社長が脱税した大金を隠し持っていることを知る。
「2000万?あのおっさんがそんな持ってるはずないやろ」
「脱税して貯めてたみたいなんです」
「ほんで?」
「だから、盗られても警察に言えないんです」
堅牢な日常の渦と凝縮された鬱屈からの逃亡劇。その一線を越えた先に待つ新たな日常を描くクライムムービー。
監督
野村有志
1月17日生まれ。京都府出身。16歳より役者活動を開始し、テレビ映画等に出演したのち2004年8月、1人演劇ユニット・オパンポン創造社を旗揚げ。全作品の脚本・演出を野村が務め、ペーソスと笑いを融合させ泥臭い人間模様を描くのを得意としている。役者としても精力的に活動中。2021年より映画制作を開始。本作「さようなら」は舞台作品からの映画化であり、長編初監督作品。
スタッフ&キャスト
監督/脚本 | 野村有志 |
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出演 | 野村有志、一瀬尚代、美香本響、川添公二、伊藤駿九郎、殿村ゆたか 、飯嶋松之助 |
スタッフ | 武信貴行(撮影監督・編集)/太田智樹、竹田和哲、タニガワヒロキ(撮影)/飯阪宗麻、 橿原大和、西村朋恵、早川聡(助監督)/浜間空洞(音楽)/浅葉修、上原優香(録音)/赤星マサノリ(劇中映像)/久太郎(セット)/KOMAKI 、ぐっち(メイク)/大牧ぽるん、緒花、林知明(撮影記録)/竹内桃子、三坂恵美(制作進行) |
© 2021 U.M.I Film makers & オパンポン創造社
上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon
プログラミング・ディレクター塩田時敏コメント
淡路島、ギリ新大阪までの、関西圏コメディ。吉本新喜劇の新時代バージョンアップ版ともいうべきグルーヴが楽しい。評判の高いステージの映画化だけに、演出の節々に舞台臭は残るものの、そのぶんセリフと会話、掛け合いの間はやはり絶妙だ。泥臭さのなかのギャグとペーソスは関西風味ながら、“変わりたい”という人の想いは全国区だろう。“ほなさいなら”、ならぬ“さようなら”。
Director’s Voice
1.映画制作をはじめたきっかけは?
自身の演劇ユニット旗揚げ後は舞台を中心に活動してきましたが、コロナ禍を過ごす中でそれまでになかった映画制作が選択肢として実現性の高い状態で近くにあることに気付いたからです。それは、撮影監督の武信さんのご尽力は勿論、資金面ではAFF等の映画制作になくてはならない様々な要素が奇跡のように、そして巡り合わせかのように揃ったのが大きかったと思います。
2.影響を受けた作品や監督は?
これまで舞台を中心に活動していたからという言い訳が出来ないほど、恥ずかしながらそこまで映画に詳しくはないのですが、有名どころでは「ライフ・イズ・ビューティフル」「リトル・ミス・サンシャイン」など美しくも儚く、温かみのある人物造形や人のやるせなさが丁寧に描かれる作品に胸を打たれ、ガイ・リッチー監督やクエンティン・タランティーノ監督のような作品構造から楽しませてくれる監督に惹かれます。
3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?
本作は元々17年前に「今(自身)からの脱却」をテーマに舞台作品として初上演しました。今以上に何者でもなかった若かりし自身をそのまま物語に投影したのが本作です。本作は初演から12年後に舞台作品として再演したのを皮切りに、その後3年連続上演を重ねた自身の代表作です。再演当初から映画化出来るのではないかとの声も頂きましたが、当時は映画制作の知識に乏しく夢物語でしかありませんでした。しかし前述のとおりコロナ禍で舞台活動が厳しい状況に晒される中、機会に恵まれ映画制作に乗り出しました。
4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?
長編作品初監督でありながら主演も務めることで体力的、精神的にも正直ギリギリだったという想い出はありますが、困難と直面したというよりも全てが刺激的な日々であった記憶・印象が強く、それは心強いスタッフの皆さんや出演者の存在がそうさせてくれたのだと思います。撮影後も撮影監督の武信さんと終わることのない編集作業を続けた日々も振り返れば豊かな日々でした。
5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?
映画の分野において何の実績も持たない自身の作品を映画館で上映する為には、映画を愛する方々に興味を持って頂くための名刺が必要であると撮影当初から念頭にありました。そして名誉ある本映画祭に選出されることがその大きな一歩になると信じ応募させて頂きました。ですが、選出していただいた際の心境は信じられない気持ちで一杯だったのが正直な気持ちです。今はスタッフをはじめ関わって下さった皆様に感謝は勿論、初稿を書き上げた17年前の自身を労いたい。
6.ご覧になる皆さんへメッセージを
まずは本作に興味を持ってくださったことに感謝申し上げます。本作はどなたでも楽しめる作品であると自負しますが、それと同時に登場人物に“いつかの自身”を重ねてくださる方の作品でもあると思います。そんな貴方に楽しんでいただけますことを。