えんまさん

Enma-san
2022年/日本語/日本/ 75分
解説
2021年度立命館大学映像学部卒業制作作品。嘘が病的なまでに嫌いな少女、廻麻(えま)と嘘をついた事が無い少女、正羅(せいら)2人の姿を通して、嘘という形のない物の輪郭やSNS社会に漂う正義の歪みを描く。モノローグ、そしてチャプターで進んでいく彼女の数奇な物語は、一体どこへ着地するのか。
あらすじ
「私にとってこの世界は、何もかもまがい物の世界なんです」鏡を見ると相手の隠し事・嘘を文字として浮かび上がらせる力を持っている高校2年生、倉田廻麻。力を手にしてからというもの極度な人間不信となってしまった彼女は、ある日嘘をついた事が無い少女、正羅と出会う。正羅との交流を通して廻麻は少しずつ心を開いていくが…。
映画祭参加経歴/表彰
S.T.E.P.大学連携による映画人育成のための上映会2022
第8回プロ映画祭(影傳普洛影展/CA the Pro. Short Film Festival)招待上映(オープニング作品)
監督
鈴木智貴
1999年大分県生まれ、京都府育ち。高校で入部した放送部で映像表現の楽しさを知り、高校2年生の「Irregular」で近畿総合文化祭放送部門ビデオメッセージ部門最優秀賞、高校3年生の「こんな僕(だけど)」でNHK杯全国高校放送コンテスト創作テレビドラマ部門京都府大会最優秀賞を獲得。大学では短編作品やMVを中心として実写映像を専攻すると共に、タイポグラフィやグラフィックデザインにのめり込む。長編作品は今作が初となる。
スタッフ&キャスト
監督/脚本 | 鈴木智貴 |
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プロデューサー | 木下実音 |
出演 | 愛恵、西村風音、長野雄海、竹田菜々華、荻野樹、こしまともみ、猪野又健、内田竜次、菊地諒、仲野瑠花 |
スタッフ | 藤井大希(照明)/鈴木智貴(撮影)/上野祥(録音)/宮崎優斗(助監督)/岡田悠子(美術)/上田知恵里(衣装)/神田綾乃(ヘアメイク) |
© Tomoki Suzuki 2022
上映スケジュール 7/28 thu – 8/1 mon
プログラミング・ディレクター塩田時敏コメント
人は皆/嘘つき、を考察する舌切スプラッター、針千本スプラッター、にしてLGBTQの百合の匂いも香る。“キャリー代行“とは面白い、と見ていると、章立て構成の途中から思わぬ方向へ。長編デビュー作にしてやりたい事を詰め込み過ぎた感もなくはないが、ゆえに意欲的なエンターテイメントだ。結果として、寛容性の無くなった現代社会の、過剰な正義感を問う地点に見事な着地をみせている。
Director’s Voice
1.映画制作をはじめたきっかけは?
中3までは映像とは全く無縁だったのですが、中3の終わりかけ、学校で行われた海外交流行事のオープニング・エンディング映像を、一眼を持っていた事から作らされる羽目となりました。分からないなりに何とか作ったのですが、エンディング映像を見て来られていた海外の方が涙を流されていて、映像って人の心を震わせる力が有るんだと気づきました。また、その映像を見て高校の放送部の顧問が自分を放送部に誘って下さり、そこで先輩や同級生と共にドラマを作り始めたのが全てのきっかけでした。
2.影響を受けた作品や監督は?
・中島哲也監督(特に『告白』『渇き。』)
それぞれ中3、高2の時に見たのですが、映像表現からストーリー、音楽まで何もかもが頭を殴られたような衝撃でした。グロい作品が実はとても苦手なので初回以来見られていませんが…。
・北海道札幌東高校放送部『ON YOUR MARK』
当時先輩に連れられ高1の放送部の全国大会で見た作品ですが、その凄さにちゃんとしたクォリティの映像を撮ろうと思ったきっかけの作品です。一般でも通用するような映像クォリティや、美しいストーリー進行は、大学を卒業した今でも憧れの一つです。
・物語シリーズ(構図やビジュアルデザイン)
・児玉裕一監督(特に椎名林檎さんのMVの数々…)
3.本作の制作動機、インスピレーションは何でしたか?
制作当時コロナ禍で、SNS上では自粛警察やコメントの炎上が相次いでいました。人と話す事が難しい中、SNSは確かに鬱憤とした感情を吐き出す場所としては最適です。ですが、その感情の行方が『叩けそうな』『悪い事をした』『違う考えを持つ』SNS上の顔も見えない他人に向いた時、人は自分の中の正義感に嵌ってしまいます。元々原案は高校の時に作ってお蔵入りにしていた嘘が見える子の話だったのですが、この子がその事でいわゆる”正義中毒”に陥ったら…と思い、卒業制作で制作する事にしました。
4.本作ではどんな困難に直面し、それをどう乗り越えましたか?
沢山ありますが、ポスプロがほぼ1人で大変だったのと、脚本があまりにも上がらなくて、Pの命令で助監督の家で脚本出来るまで缶詰になった事が特に大変でした。技術的な事だと、長編は初だったので大量のデータ管理が大変でした。自分はむやみやたらとカメラを回す悪い癖があり、映像素材が1000クリップ以上とかさんでしまいました。最終的に死にかけになりながら1人リネームや編集を行い、4TBのHDD4台と6TBのHDD2台でバックアップ含めデータを取りましたが、完成直前で生データが入ったHDDが死んでしまうなど色々ドタバタでした。
5.本映画祭への応募動機と選出された心境は?
以前からゆうばり映画祭は日本でもトップクラスに尖った作品が集まっているイメージがあったので凄いな、いつか出してみたいなと漠然と思っていました。ただ、今回の作品は初めから応募しようとガッシリ思っていたのではなく、作品が完成し大学も卒業した中、どの映画祭に出そうかな~とポヤ~っと調べていた時、たまたま次の日〆切のこの映画祭がヒットし慌てて応募しました。ですが、歴史がありめちゃめちゃ楽しいこのゆうばり映画祭の上映作品に選出して頂き本当に光栄です。映画祭も楽しんで参加させて頂ければと思います。
6.ご覧になる皆さんへメッセージを
重いシーンも痛いシーンも多いですし、伝えたい事も沢山ありますが、この作品を作る時に、まずは純粋なエンターテイメント作品として成立させることを目標に置いたので、彼女らに振り回されつつ最後まで見て頂ければ幸いです。